カンピロバクターとはノロウイルスに並び食中毒のチャンピオン菌として知られる細菌です。
ノロウイルスは、ウイルスですが、カンピロバクターは細菌です。呼び名はギリシャ語の由来ですが、直訳すると「曲がった細菌」といいます。
カンピロバクターの構造について説明すると、グラム陰性と呼ばれる3層のつくりになっており、表面が脂質やタンパク質で覆われており「らせん状」の形をしています。
画像参照)http://kusuri-jouhou.com/(役に立つ薬の情報サイト)
参考)ノロウイルスについて
グラム陰性があれば逆にグラム陽性という構造もあるのですが、グラム陰性とグラム陽性の違いは菌の表面を覆う膜の違いによって分けられます。
グラム陰性は脂質やタンパク質で覆われているため人の免疫にも見つかりにくく、死滅しても毒性を発揮するため、グラム陽性に属する菌よりグラム陰性に属する菌の方が症状が重くなりやすいという傾向にあります。
※グラム陰性には、カンピロバクターの他に赤痢菌、ペスト菌などがあります。
カンピロバクターの形
カンピロバクターの体長は0.5~5.0μm(マイクロメートル ※1mmの1000分の1の単位 )で両端からは鞭毛(べんもう)が伸び、らせん状の形でくるくると動き回ります。
他の特徴として、微好気性で多湿を好みます。気温は常温(30℃)以下では生存はできても増殖はできません。
微好気性とは普通より少ない酸素濃度の空気を好むという意味で、カンピロバクターの場合は酸素濃度3~15%を好むといわれています。
普段私たちが生活している酸素濃度の環境や逆に無酸素の状況では増殖できません。
※ちなみに普段の空気中の酸素濃度が21%といわれていますので安心出来るのでしょう。
気温は30~38℃の間を好むといわれていますが、季節的には夏よりも冬の方が発生が増加しています。
夏は食品をすぐ冷蔵庫に入れたり火をしっかり通したりして、食中毒に警戒して生活しますが、逆に冬だと気が緩み、肉を少し生の状態で食べたり、冷蔵庫に入れておかなくてもすぐには悪くならないと思いがちです。
しかし、お肉を暖房で暖まった室内に出しっぱなしにしたりすると、菌が増殖しやすい環境を作ってしまうため結果として夏よりも冬のほうが発生事案が多くなります。
カンピロバクター菌の感染源や感染力、潜伏期間について
感染源
主に知られているのは鶏肉ですが、その他牛、豚、ヤギなどの家畜系動物にもおります。
動物の腸管内に生息しており、糞便から検出されます。他に身近な所だと犬猫の糞便からも検出されることがあります。
※ちなみに、スーパーで売られている鶏肉の約6割にカンピロバクター菌が付着していますので、必ず加熱しましょう。
鶏肉を生で手や調理器具でさわったら、接触感染に注意です!必ず除菌致しましょう。ちなみに冷凍しても細菌は死滅しません。
感染力
感染力はとても強く、数百体の菌でも感染・増殖致します。
しかし、気温、湿度、酸素濃度、どれか1つでも欠けると細菌自体は増える事はありません。
潜伏期間
潜伏期間は比較的長く、早くても1日、長いと7日程体内に潜伏致します。
人や環境によっても違うと思いますが、平均すればだいたい2、3日の潜伏期間を経て症状がでますので、感染発症した場合は原因の特定が難しいのも特徴です。めったに感染しない夏のインフルエン(腹痛を伴うb型タイプ)とその症状はにています。
妊娠中のカンピロバクター感染に注意
胎児への影響
妊娠中の方は特にカンピロバクターへの感染に注意しなければなりません。
感染してしまうと流産の危険もあり、母体への影響だけでなく、お腹の中の胎児にも胎盤を通して感染し影響が出てしまうこともあるからです。
カンピロバクターの場合、胎児に奇形性を生じさせ奇形児として生まれてきてしまったり、脳に障害がでてしまう可能性もあります。
その他、髄膜炎、敗血症になってしまう可能性もあります。
母親がカンピロバクターに感染すると、胎児に影響が出る確率は15~20%とも言われていますので感染には十分注意しなければなりません。
しかし妊娠中は普段の非妊娠時よりも体が菌に対して抵抗力が低くなってしまっていて感染症に感染しやすくなっているのです。
ですので妊娠中には普段にも増して食品などに注意していかなければなりません。
妊娠中に気をつけたいその他の食品
妊娠中カンピロバクター感染に気をつけたいなら、食肉やホルモン類の生食はもちろん、飲料水にも注意しましょう。
特に牛乳は未殺菌のものだと危険度は十分にあります。
飲料水は市販のもので開封後はなるべく2、3日以内に飲みきり、ペットボトルやパックなどの容器に直接口をつけるのではなくコップなどにあけて飲むのがいいでしょう。
厳密に言えば、他の人から貰うなどの跨ぎもやめた方が無難だと思います。
そういった経路からの感染も可能性がありますし、そこに健康保菌者が関わってきた場合、長期間の保菌から母体、胎児両方が重症化する危険性があります。カンピロバクター以外だと、チーズなどの乳製品や生ハムなんかはリステリア菌の感染が疑われますので気をつけましょう。
普段は大丈夫だった物でも妊娠中となると感染症になりやすくなる為に注意致しましょう。
※日本で普段の食生活をしていれば通常は問題ないですし、必ずしも胎児に悪影響がでるという訳でもありません。
胎児だけではなく、母体への負担にもたりますので、妊娠中の食生活はいつも以上に衛生面に気を使っても安全でいいと思います。
そしてそれには周りの人の理解や家族の協力も必要です。妊娠中の方だけではなく、家族全員でのカンピロバクターなどの食中毒に対する意識をもつ事がとても重要だと思います。